出産スタイルのご紹介
「自分らしい出産」を考えるとき、一番重要なのは最大のイベントとなる「出産・分娩」の方法、いわゆる「出産スタイル」の選択です。
医学は日進月歩で進化していますが、出産を専門に診る産科も日々進歩しています。そのため、一昔前までは一般的でなかった出産スタイルが当たり前のものとなるなど、選択の幅が拡がっています。
そのため、どのような出産スタイルがあるか、その特徴を知って、「自分らしい出産」にもっとも適した「出産スタイル」を選ぶことが大切です。また、産院によっても得意としている出産スタイルや、サポート可能な出産スタイルは異なっています。「出産スタイル」を検討することは、産院選びでも重要な要素となります。
ここでは、数ある出産スタイルの中から、代表的なものを5つピックアップしました。
それぞれの特徴、メリット・デメリットなどを知り、「自分らしい出産」のプランと病院選びにお役立てください。
赤ちゃんの出産経路について
経腟分娩
赤ちゃんが産道(腟)を通って出てくる出産です。
自分のいきむ力を使って出産するため、体力が必要になります。
そのため、妊娠の経過・状況や妊婦さんの骨盤・産道の状態、持病や赤ちゃんの状態などによっては出産が困難で長時間になるため、選択できない場合もあります。
帝王切開術
下半身だけの局所麻酔または全身麻酔を行い、手術でおなかと子宮を切開して赤ちゃんを直接取り出す出産です。
妊娠の経過を観察する段階で経腟分娩が適さないと判断された場合に選択される「予定帝王切開」と、経腟分娩中に母体や赤ちゃんに危険が及ぶと判断された緊急時に選択される「緊急帝王切開」があります。
予定帝王切開は、分娩予定日より少し前の日に設定し、陣痛を待たずに手術で出産するため、、分娩そのものの痛みはほとんどありませんが、お腹に10㎝あまりの傷が残ります。
詳しくは以下を参考にしてください。
帝王切開は増加しています
2005年の統計では、わが国の妊婦さんの6人に1人(17%)が帝王切開によって出産しており、過去20年間で約2倍に増えています。当院でも同様の傾向です。
病院の実績「帝王切開実績」理由として、赤ちゃんの安全を重視するようになったことや、高齢初産や不妊治療後の妊娠などのハイリスク症例が増加していることがあげられます。
帝王切開術の種類は?
大きく分けると2種類あります。
1. 選択的(予定)帝王切開術
あらかじめ計画的に行う帝王切開です。逆子(骨盤位)・双胎(ふたご)・前置胎盤・児頭骨盤不均衡・前回帝王切開などが該当します。
2. 緊急帝王切開術
通常のお産を予定していたか、すでに経腟分娩が進行中に、母体か赤ちゃんに何らかの問題が起きたため急いで赤ちゃんをとり出す必要がある場合に行われます。胎児機能不全(心拍パターン異常)・胎盤早期剥離・妊娠高血圧症候群・分娩進行障害などが該当します。
麻酔法について
ほとんどの帝王切開術は、脊椎麻酔または硬膜外麻酔(またはその両方)のもとで行います。いずれも下半身に効く麻酔なので、手術中でも意識があり、赤ちゃんと対面して産声を聞くことができます。なお、無事出産したのちに、お母さんには鎮静剤で眠っていただくことがあります。ごくまれに、全身麻酔のもとで緊急帝王切開術が行われます。いずれの麻酔法でも、赤ちゃんに影響がでることはありませんのでご安心ください。
お腹の切開方法は?
少しでも傷が目立たないように、恥骨の上を横に切る形(横切開)を基本として行います。切開距離は10~15cmですが、お腹の大きさが妊娠前に戻るとともに、傷口は小さくなります。緊急帝王切開で赤ちゃんを早くとり出す必要がある場合や、子宮筋腫などのために手術の視野がせまくなる場合には、おへその下から恥骨に向かって縦に切開します(縦切開)。以前に帝王切開などで下腹部を切開している場合は、前の傷跡を切り取るように切開します。
手術後の痛みは?
ほとんどの帝王切開では、硬膜外麻酔のカテーテル(細いチューブ)をつけたまま手術室から帰室します。これに麻酔薬を注入することによって、つらい痛みはほとんどありません。それ以外でも注射薬や坐薬を使って、できるだけ痛みなく快適に過ごしていただけるようケアしています。
ケロイド体質なのですが?
帝王切開の傷は、3ヶ月ほどで赤みもとれ1年ほどで目立たない状態になるのが一般的です。体質によってはケロイド状に残ることもあるため、気になる方にはケロイド予防の飲み薬を処方したり、傷を保護するためにシリコンゲルシートを提供しています。
出産スタイルについて
自然分娩
自然の陣痛を待ち、極力医療介入なしに、ほぼ自力によって行われる出産スタイルです。ご自身が自然分娩で生まれてきたため、お子さんも同様に自然分娩で出産したいと考えている方や、分娩時の痛みに対する不安が少ない方に適しています。
計画分娩
出産日をあらかじめ設定し、その日に陣痛促進剤などの医療介入を行う出産スタイルです。上のお子さんのお世話などご家庭の事情でスケジュールを最優先したい方や、立ち合い出産を必ず実現したいと思われている方に適しています。
計画分娩の利点と注意点
計画分娩とは、人為的に分娩日を決めて分娩誘発を行うことです。
利点 |
胎児の心拍パターンを分娩終了まで継続的にモニターすることによって、安全にお産をすることができます。また、人手の多い時間帯にお産していただくことで、異常や合併症に対して迅速に対応することができます。 |
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注意点 | 分娩前処置や陣痛促進剤を必要とする場合は、わずかにリスクがあります。したがって、「いかに自然に近いお産を行うか?」が重要であり、無理な分娩誘発は絶対に行ってはいけません。陣痛促進剤は、自然なお産でも脳から出てくる物質ですが、厳重な管理下で用いる必要があります。 |
分娩日の決め方 | 産科学的判断のもとに分娩日を決定します。現在までの妊娠経過、過去の分娩の情報を検討します。妊娠36週以降、毎週の内診所見と胎児の状態を総合的に判断して、お産の準備状態が整う時期を予測します。本人やご家族の希望もあわせて、実際にお産する日を決定して予約します。 | 分娩前処置 | 入院は、原則として決定したお産の日の前日です。入院後、分娩監視装置で胎児の心拍パターンと子宮の収縮状態を確かめます。内診所見によっては、あらかじめ子宮口を広げる処置が必要になる場合があります。ミニメトロという小さな水風船を子宮口に入れるのですが、痛みはほとんどありません。 | 分娩当日 | 浣腸後、分娩監視装置を着けて陣痛促進剤の点滴をはじめます。次に胎児を包む膜を人工的に破る処置を行い、分娩誘発を開始します。無痛分娩の方には、硬膜外麻酔の処置をあわせて行います。陣痛促進剤については、母児に負担がかかり過ぎないように、ごく少量から開始して慎重に増量していきます。 |
計画無痛分娩
出産日をあらかじめ設定し、分娩時の痛みを麻酔等によって緩和する出産スタイルです。計画分娩の特徴に加え、出産の妨げにもなりうる強烈な痛みを抑えるため、リラックスして出産に臨めるなどのメリットが得られます。
痛みの緩和方法として「硬膜外麻酔」を利用した無痛分娩が主流になっています。
お産の痛みと無痛分娩
陣痛の感じ方には個人差がありますが、お産直前のもっともきつい痛みは、癌や骨折の痛みより強いといわれています。この陣痛を我慢する必要はないという考えから、欧米では無痛分娩があたりまえのように行われています。無痛分娩にはいろいろな方法がありますが、現在もっとも普及しているのは、硬膜外麻酔を利用したものです。
無痛分娩のすぐれた点は?
- 産痛が10分の1以下におさえられるので、リラックスして余裕をもってお産にのぞむことができます。
- お産の所要時間が短時間ですむので、疲労感が少なく回復が非常に早くなります。
- 陣痛に対する不安や恐怖感が強い方やパニックになりやすい方は、痛みをおさえることによって、より安全に分娩を行うことができます。
- 緊急時は、そのまま帝王切開も可能となります。特に、ハイリスク分娩の場合に有用です。
無痛分娩(硬膜外麻酔)の方法
ベッドに横になって背中を丸めてもらいます。
背中を消毒し、局所麻酔を行います。
特殊な針を用いて、硬膜外腔という小さなスペースに細いチューブを留置します。
局所麻酔薬をチューブから少量ずつ注入して、徐々に麻酔を効かせていきます。
麻酔が効いてくると、意識ははっきりしたままで下半身の感覚がにぶくなってきます。陣痛やお産の痛みはぐっとおさえられますが、胎児の下降感や圧迫感は残り、自分で「お産」をしているという満足感が得られます。
オンデマンド無痛分娩
自然に陣痛が起こるのを待って、分娩が始まってから硬膜外麻酔を行う出産スタイルです。
当初は痛みの緩和(無痛分娩)を希望していなくても、陣痛や出産の進行により耐え難い痛みで出産が困難になった場合に、無痛分娩へフレキシブルに切り替えることができます。痛みに不安はあるものの自然に赤ちゃんが出てくるタイミングを待ちたい方や、分娩日を決めることに抵抗感のある方などに適しています。
ハイリスク分娩
以下の項目に当てはまる妊婦さんは、ハイリスク分娩管理の対象となり、常に帝王切開などの緊急処置を視野に入れた分娩管理が必要です。
極端な肥満妊婦
お産の前のBMIが35以上(例えば身長160cmで体重90kg以上)だと、難産になる可能性が高くなります。
妊娠高血圧症候群重症
昔は「妊娠中毒症」といわれていた病気で、高血圧と蛋白尿が同時に出てくると、母児の急変が起こりやすく、大変危険な状態です。
これ以外に、低身長(150cm未満)の方は骨盤が狭くて胎児が出にくい可能性が高くなりますし、内科的合併症を持った妊婦さんもリスクがあります。また、双胎(ふたご)が年々増えてきています。二人の赤ちゃんが一度に産まれるわけですから、人手の多い時間帯にお産になるよう積極的に管理しています。
病院の実績「分娩実績」Q.ハイリスク妊婦は周産期センターや大学病院で分娩しないといけませんか?
当院から高次医療機関に紹介するのは、合併症が重症化した場合と妊娠34週までに分娩になりそうな切迫早産に限定しています。合併症があっても安定している方、高齢初産や肥満の妊婦さん、双胎の方も積極的に受け入れています。
Q.なぜ、ハイリスク分娩では計画無痛分娩をすすめられるのでしょうか?
無痛分娩から帝王切開に切り替えることがすばやくできるので、時間のロスを最小限にして、より安全な分娩管理ができます。
愛育病院のご紹介
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